雲のアルバム

☆十種雲形

☆虹の科学

☆ちょっと面白い光景その1

☆ちょっと面白い光景その2


☆ 十種雲形

雲の形は実に千差万別ですが、基本的なパターンは意外と少なく、大きく括って十種の基本形に分けられます。このページでは十種の基本形の写真を紹介します。まだすべてのタイプの写真が揃っていませんが、順次追加していきます。
巻雲(Cirrus)

巻雲は刷毛で掃いたように細い雲の筋が見える真っ白な雲です。この写真のように広い範囲に筋が広がっている場合もあれば、ほんの少しだけ見える場合もあります。高いところにできるので雲の粒は氷の結晶(氷晶)から成り立っています。氷晶はきれいな結晶面をもっていますので太陽光をよく反射し、明るく真っ白に見えます。
巻雲−1 巻雲−2

巻層雲(Cirrostratus)

巻雲が次第に量を増やし、空を敷き詰めて行くと、空が純白のベールを広げたようになります。そのようになると巻層雲と呼ばれます。巻層雲は空全体に広がる場合もありますし、空の一部だけに広がる場合もあります。この写真は巻雲が次第に集まってきている状態を表し、巻層雲となる前の状態を表します。巻層雲を通して太陽や月を見ると太陽や月のまわりに視半径22°の光の輪が見えます。これが「暈(かさ)」と呼ばれる現象です。暈が現れたらその雲は巻層雲と考えられます。巻雲や巻層雲は温暖前線面の上端近くによく現れ、悪天候のさきがけとして知られます。巻雲が巻層雲に変わり、さらに厚みを増していくようだと、天気は下り坂と考えていいでしょう。
巻層雲−1
巻積雲(Cirrocumulus)

巻層内の対流によって上昇部と下降部ができ、その配列が雲のパターンを表すと考えられます。ごく小さなパターンが規則的に配列するものが多く、時にはその配列が波状になることもあります。
巻積雲−1 巻積雲−2
高層雲(Altostratus)

空の広い範囲を一様な雲が覆って、少し暗くなった状態です。雲の厚みが薄い場合は暗さがあまり感じられませんが、厚い場合ははっきりと太陽光がさえぎられているのがわかります。高層雲を通して太陽を見ると、この写真のように周囲が滲んだように見えます。その程度も雲の厚さによってかなり変わります。
高層雲−1 
高積雲(Altocumulus)

巻積雲と同様に規則的に雲の細胞が並びます。巻積雲に比べて細胞の大きさが大きく、また陰影ができることが多いです
高積雲−1 高積雲−2
層雲(Stratus)

低い高度にできる不規則な形をした雲です。見た目では霧と区別がつきません。実際、この雲が地面に触れていると「霧」とされます。
層雲−1 層雲−2
層積雲(Stratocumulus)

低い高度にでき、畑の畝のように連なる大きな雲の塊のj配列です。
層積雲−1
乱層雲(Nimbostratus)

雲底は一般に低いですが、雲頂はかなり高いところまで及んでいる場合があります。雨を降らせるのが特徴で、厚みのある場合は、不気味なほど空が真っ暗になります。
乱層雲−1 乱層雲−2
積雲(Cumulus)

1−(扁平積雲)−上
綿菓子のように空にぽっかりと浮かんだ白い雲で、お天気のよい日にはよく現れます。好晴積雲とも呼ばれます。

2−雄大積雲− 下
同じ積雲でも、ぐんぐん上に発達して盛り上がっていくものを雄大積雲といいます。入道雲として知られています。雄大積雲がさらに発達すると、やがて雷が発生したり激しい雨や雹が降ったりするようになります。そのようになった時、積乱雲と呼ばれます。
扁平積雲−1

雄大積雲−1 雄大積雲−2
積乱雲(Cumulonimbus)

雄大積雲が発達して雲頂が圏界面に近くなると、雲の内部では大量の降水が蓄積され、一気に落下を始めるため、地上では激しい雨が降ります。また、しばしば雷が観測されます。この段階になると雲は積乱雲と呼ばれます。発達した積乱雲からは連続したインフラサウンドが発生することがあります。
 1個の積乱雲の寿命は1時間くらいですから、夏の夕立をもたらす積乱雲は1時間くらいで活動を終えます。しかし、時には積乱雲が数個集団で発生し、1つが寿命を終える前に別の新しい積乱雲が発達するという具合にして、結果的に半日ないし1日くらいの間積乱雲群が停滞して激しい雨が続くことがあります。集中豪雨はこのような条件下で発生するのが普通です。
積乱雲−1

☆ 虹の科学

 雨上がりの空などを美しく彩る虹は、見ている誰もを幸せな気分にしてくれます。あの色の配列や大きさや現れる位置などについては比較的初歩的な幾何学を用いて説明することができます。

主虹 主虹・副虹
主虹 主虹と副虹(梅村雄樹氏提供)
左側の写真が普通に見られる虹で、多くの場合はこのように1本だけアーチが見られます。しかし、時には右の写真のように虹が二重になって見えることがあります。二重の虹が見られるときは、内側のものを「主虹」、外側のものを「副虹」と呼びます。副虹は光が弱いので見られないケースが多く、そのときは左の写真のように主虹のアーチが一本だけ見えます。
 虹の見え方の特徴を列記してみますと次のようになるでしょう。

 1.自分のいる所は太陽光が当たっているが、虹の見えている空には雨滴の集団がある
 2.形状は円弧である(ただし地上では完全な円が見られることはまずない)
 3.円弧の中心は、太陽と反対側で、太陽と自分の頭を結ぶ線の方向にある
 4.円弧の視半径は主虹で約42°、副虹で約51°である
 5.主虹の色の配列は外側から赤、橙、黄、緑、青、紫の順になっている
 6.これに対して副虹の色の配列は反対に内側から赤、橙、黄、緑、青、紫の順になっている
 7.主虹と副虹の間の空は他の部分に比べて暗い(右の写真参照)

1−4を考慮すると、中緯度地方では夏の正午近くに自然の虹が見られることはまずないことがわかります。夏の正午近くには太陽高度が高く、虹ができるとすれば円弧の中心は自分の足元ちかくにあることになります。そこから約42°の方向をみると大抵は自分の近くの地面を見ることになり、自分のいる所は晴れていてその部分だけ雨が降っているということは起こりにくいわけです。また、1−4から、一般に虹は太陽高度の低い朝や夕方に現れやすいこともわかります。
 
1.の説明  
 大気中に浮遊する雨滴はほぼ球形をしており、そのサイズは1mmくらいです。このサイズは太陽の可視光線の波長(0.4-0.74μm)に比べて1000倍かそれ以上ありますので、雨滴に入射した太陽光線は幾何光学的な反射・屈折の法則に従います。虹は雨滴がプリズムに似た働きをして太陽光が分光されて見られる現象です。雲粒も小さな水滴ですが、そのサイズは10μm程度で太陽の可視光線の波長に対して十分に大きいとはいえず、雲粒に当たった太陽光は幾何光学的な反射・屈折の法則に従うというよりはむしろ散乱によって撒き散らされます。このような散乱はMie散乱と呼ばれます。従って雲があるだけでは虹は見られません。

2.3.4.の説明
     
               図1 主虹のでき方                   図2 色々な位置に入射する光線を考える
 大気中に浮遊する1つの雨滴を考え、その表面に太陽光が当たったときの光の進み方を考えます。雨滴の中心と太陽光を含む平面内での光の道筋がどうなるかを考えてみましょう。図1でA点に左から入射する光は水滴に入る際に屈折してA→Bと進みます。水の屈折率を n としますと、図で入射角 i と屈折角 r とは次の関係で結ばれます。
     
屈折率 n の値は水の場合ほぼ1.33ですが、波長によって少し変ります(詳細は後述)。
 水滴内でBに達した光の一部は水滴の内面で反射し、B→Cと進みます。Cに達した光の一部は再び屈折して空気中に出て行きます。もちろんBから屈折して出て行く光もありますし、Cでさらに水滴内で反射する光もありますが、右の赤色の矢印で示した進み方をする光を考えることにするわけです。
 このようにしてCから出て行く光が太陽の方向となす角を α と書くと、α は i と r を使って次のように表すことができます。
    
この式の証明は簡単です。Aに入射した光はA点で(i−r)だけ時計回りに向きを変えます。次に点Bにおいて(π−2r)だけ時計回りに向きを変えます。そして最後に点Cで再び(i−r)だけ時計回りに向きを変えます。従って水滴から出て行く光は最初の方向に対して2(i−r)+π−2rだけ方向を変えたことになります。さらにαだけ時計回りに回転すると太陽の方向と完全に逆向きになりますから、
    
これから上の式が得られます。

 水滴に対して一定の方向から太陽光があたる場合にαの値がどれくらいになるかを計算してみます。αは最初に光が入射する位置によって変化しますので、図2のように、中心を通る線Nより上で水滴の上端Mまでの間に入射する光をたくさん考えて、それぞれに対してαを計算します。(中心を通る線より下に入射した光は水滴によって反射・屈折を受け、上のほうに行ってしまいますので地上にいる私たちの目に届くことはありません。)
 例えばMとNの間に均等に1000本の入射光線を考えて、1000通りのαを計算し、得られた1000個のαの値が0°〜1°、1〜2°、2〜3°・・・の範囲に入るケースがいくつあるかを求め、頻度分布を計算したものを図3に示します。
主虹を作る反射光の角度αのヒストグラム

図3 αの値の頻度分布(主虹) 
 図3から、太陽の方向に対して41°〜42°の角度をなして反射してくるものが最も多いことが分ります。すなわち、太陽と自分の頭を結ぶ線に対して42°の方向を見ると、(もしそこに雨滴の集団があれば)空のその部分は他の部分よりも太陽光を多く反射しているので明るく見えるはずです。明るい部分は円形をなしており、これが主虹のできる原理です。主虹を見つけようと思ったら、地面にできる自分の頭の影の方向から42°の方向を探せばよいわけです。

 全く同様にして副虹の大きさも求めることができます。主虹は水滴内で1回反射して出てきた光が見えるものですが、副虹は水滴内で2回反射した光が見える現象です。その様子を図4に示します。
 
             図4 副虹のできかた                     図5 色々な位置に入射する光線を考える
 図4にはA点に左から入射した光が屈折して水滴内に入り、水滴内で2回反射してB→C→Dと進み、Dから再び屈折して空気中に出て行く道筋が示されています。このとき水滴から出てくる光が太陽の方向となす角αは
     
で与えられます。(主虹の場合と全く同様にして証明することができます)。主虹の場合と同様に、水滴の色々な部分に光が当たったとき、αがどのような値をとることが多いか調べてみます。今度は水滴の上半分に当たる光が上方に逃げていきますので、図5のように水滴の下半分、M−Nの間に均等な間隔で入射する光を1000とおり考え、それぞれについてαを計算してその頻度分布を求めると次のようになります。

図6 αの値の頻度分布(副虹)
 今度は51°〜52°の角度で出てくる光が多いことが分ります。つまり、太陽と自分の頭を結ぶ線に対して52°くらいの方向をみると、(もしその方角に雨粒の集団があれば)その方向からはやや多くの反射光が帰ってきています。これが副虹です。
 このようにして虹のでき方を雨滴による太陽光の反射・屈折によって説明した最初の人は数学者のデカルト(Rene Descartes, 1600-1657)です。スネル(Willebrod Snell van Royen, d.1626)によって有名な屈折の法則が発見されてからわずか20年後のことでした。コンピュータなどなかった時代に、デカルトは10000通りもの光の道筋を筆算で計算して虹の大きさがいつも同じであることを示したと言われています。但し、色の配列の説明については、彼の発見から少し時代が下がって太陽光がプリズムによって分光されることが知られるようになるまで待たなければななりませんでした。

5.6.の説明
 上の説明で虹が円弧をなし、その視半径は主虹で41〜42°、副虹で51〜52°であることが分りました。デカルトの発見後、ニュートンがプリズムを使って太陽光(可視光)を赤、橙、・・・・紫の光に分光できることを見つけました。ニュートンは一度分光した光を別のプリズムを使ってもう一度合成すると白色光が得られることも示したと言われています。虹の色の配列も同じ原理で、水滴によって太陽の可視光が分光されて起きる現象です。水の屈折率は大体1.33程度と述べましたが、こまかく見ると波長によって少しずつ異なり、次のようになっています。
表1 種々の色の波長と屈折率(理科年表による)
藍色 黄色
波長 0.4047 0.5461 0.5893 0.6563
屈折率 1.3428 1.3345 1.3330 1.3311
 これによると、波長の長い赤い色は波長の短い青い色に比べて屈折率が小さく、水滴に入射したときの「曲がり」が少なくてすみます。そこで、赤と青の2つの光の水滴内での進み方を模式的に示してみます。図7が主虹の場合、図8が吹く虹の場合を表します。
          
       図7 主虹における赤と青の光の進                  図8 副虹における赤と青の光の進路
図7から分るように、主虹では赤の光は青の光よりもαが大きく、従って視半径が大きいので赤が外側に見えます。これに対して副虹の場合(図8)は青の光の方がαが大きく、従って視半径が大きいので青が外側に見えます。他の色はその間を順番に埋めているので、主虹は外側から赤、橙、黄、緑、青、紫の順に色づいて見え、副虹はその逆の順序で色づいて見えるわけです。

7.の説明
 図3と図6をあわせると主虹、副虹によって上空からやってくる光の角度の頻度分布が得られます。これを図9に示します。

                図9 反射光と太陽の方向との角度頻度分布(主虹と副虹を合わせたもの)
0°から90°までの間で42°〜50°の範囲は反射光の数がゼロです。従ってこの範囲からは少なくとも水滴内で1回または2回反射して帰ってくる光は皆無ということになります。他の原因でこの方向からやってくる光がありますので完全に暗黒にはなりませんが、主虹と副虹の間の空は一般に暗くなっているはずです。上記の写真にもそれがよく表れています。また、主虹と副虹では帰ってくる光の量がかなり違います。主虹では41°くらいの角度から帰ってくる光がかなりありますが、副虹では最大でもその半分以下です。従って主虹に対して副虹は光が弱く、条件のよいときでないと見られません。

☆ ちょっと面白い光景その1

次の写真を眺めてください。これは雲の間から太陽の光がもれているところです。でも、ちょっと奇妙に感じられませんか?地球と太陽の距離は1億五千万キロもあり、雲の高さと比べたら無限大に等しいはずです。無限の遠方からの光は平行光線とみなしていいはずなのに、このように放射状に光が出ているのは変ですね。この現象をどう説明したらいいでしょうか。

雲間からもれる光

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☆ちょっと面白い光景 その2

 ジェット機が空を飛ぶとき、しばしばその後ろにくっきりと「飛行機雲」が見られます。下の写真(左)がその例です。ところが、よく注意して観察していると、下の写真(右)のように、飛行機雲の近傍に一本の「雲のない筋」が見られることがあります。この現象は埼玉県在住の菊地太郎氏が2006年1月にご指摘くださるまで、私は知りませんでした。
 

 さて、この「雲のない筋」はどう考えたらいいでしょうか。
ここではこの不思議な筋を「反雲」(anticloud)とでも呼ぶことにしましょう。飛行機が飛ぶことによってこの「反雲」が出来る仕組みを次のように考えてみました。間違った考えかも分りませんので大方のご批判を仰ぎたいと思います。

 このような「反雲」ができるのは、上の写真でも分るように空が高層雲で覆われているときです。高層雲の高度では雲粒はほとんどが過冷却水滴から成り立っています。その中をジェット機が通過すると、その後部での減圧によって空気が急冷され、大量の「氷晶」雲が作り出されます。高層雲がない場合は上の左の写真のようにその氷晶雲は美しいジェット雲として空に残りますが、高層雲中では少し違った反応が生じます。それはいわゆる「ベルシェロン過程」と呼ばれている現象です。過冷却水滴に対する飽和水蒸気圧は氷晶に対する飽和水蒸気圧よりも少し大きいので、両者が混在している場では過冷却水滴はどんどん蒸発し、出てきた水蒸気が氷晶の上に昇華して集まるのです。このようにして、飛行機の通った跡では高層雲は解消して筋状の「反雲」が残り、成長した氷晶雲は上空の風に流されて位置を変えていくことになるでしょう。ただし、上の右側の写真に見られるジェット雲は反雲を作り出した当のジェット雲であるのか、あるいは別のジェット機によるものであるかははっきりしません。
 この推論が正しいかどうかをチェックするには「反雲」の出来る現場を捉えればいいわけです。そのチャンスを待っていましたところ、2006年4月6日に下のような写真が撮れました。


ジェット機の通過したすぐ後に、見事な「反雲」が出来ています。つまり、ジェット機は高層雲の中に雲の種まき(cloud seeding)をやってくれていたわけです。
ジェット機は雲を作るだけでなく、逆に雲を解消させる働きもするのですね。

(註)上に2枚並べた写真の右側のものに見られる黒っぽい筋については、菊地太郎氏はジェット機による種まきの結果生じた「反雲」ではなくて、上方にあるジェット雲の影が下の層状の雲に投影されたものではないかと強く主張しておられます。この写真が撮影された時刻の2分前に太陽の近傍を見た写真を下に示します。菊地氏はこれについても黒い筋はジェット雲の影であると信じておられるようです。

たしかに黒い筋はジェット雲に対して太陽と反対側にあり、あたかも影のように見えています。ジェット雲の高度が仮に8000mであるとし、黒い筋がその影であるとするなら、影の高度はどれくらいになるでしょうか。高校数学程度の知識で簡単に計算できますのでやってみてください。計算のために必要なパラメーターは次の通りです。

カメラの垂直の画角=約39°(実測値)
撮影日時=4月4日12時57分
撮影場所の緯度=北緯35度12分
撮影場所の経度=東経137度6分


計算の答はこちら